saitou_ken_monogatari
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アン・コーカスなどさまざまなコーカスが予算を申請にやってきた。ホームレスのために家のペンキを塗るなどボランティア活動をおこなうコーカスもあった。斎藤は、彼らの要望を聞きながら、しみじみと思った。〈アメリカのクラブ活動は、アメリカ社会の縮図みたいなものだ〉日本人の留学生は、授業に出席し、図書館で勉強するだけ、というパターンが多い。が、斎藤は、自治会の役員をつとめたおかげでアメリカ社会の縮図に触れることができ、非常に勉強になった。あるとき、財政委員会に「湾岸戦争反対を主張する新聞を発行したい」という案件が持ち込まれた。財政委員会は、「みんなから集めた自治会費を、ある政治的な主張をすることに拠出できるのかどうか」で大議論となった。結局、財政委員会では決められず、総会にはかった。が、一度では結論がでず、2度目の総会で否決された。斎藤は思った。〈アメリカという国は、こういうことも真剣に議論するんだな〉アメリカ人は、きちんとロジックを組み立てて13さいとう健けん物語

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