自由民主党 衆議院議員 さいとう健 Official Site

テロ等準備罪、何のため?

 今号では、今後の国会における最大の焦点の一つ「テロ等準備罪」を取り上げます。少々専門的になりますが、大事な争点なのでご容赦いただければ幸いです。

 

1.なぜ必要?

 国際的なテロ活動の活発化を踏まえて国際組織犯罪防止条約が発効し、世界187か国・地域が締結済みになってますが、先進国の中では日本だけが未締結状態になっております。

 参考(日本以外の未締結の国)イラン、コンゴ共和国、ソロモン諸島、ソマリア、ツバル、パプアニューギニア、       パラオ、ブータン、フィジー、南スーダンの10か国のみ

 「テロ等準備罪」の創設はこの条約を締結するために、必要なものとなっております。

 

2.そんな犯罪を新設しなくても締結できないのか?

 この国際条約では、第5条1(a)で、従来の犯罪行為の未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪として、次の犯罪のいずれか一方又は双方を犯罪として処罰できるようにすることが求められております。

 1)重大な犯罪を行うことの合意(重大な犯罪の合意罪)

 2)組織的な犯罪集団活動への参加(参加罪)

 しかしながら、日本にはこの二つの犯罪のいずれもが存在していません。

 

3.日本が条約を締結しないとどんな問題が生じるのか?

 東京オリンピック・パラリンピックを前にして世界各国と協力しながらテロの未然防止に努めねばならない日本が、この基本的な条約すら締結しないというのは、世界から多くの方々が来日しその安全を確保しなければならないわが国としてまずあり得ないことです。

 加えて、他に大きな問題としては、他国との捜査協力に支障が生じるということがあります。1.で述べましたように、日本以外のほとんどの国がこの条約を締結してますので、本件捜査をしている国から日本に捜査協力依頼が来ることは十分にありえます。そのとき、日本が条約を締結していれば、日本から証拠を提供するなどの協力ができますが、締結していないと、その国は、複雑な日本の法律のどこに違反する可能性があるということを細かく検討しないといけないということになります。これでは時間がかかりすぎるし、事実上、日本の協力は得られないということにもなりかねない。そして、その結果、その国で現実にテロが起こってしまったら、日本の国際的立場はどうなってしまうでしょうか。

 

4.一般の人が無実の罪で拘束されることになるのではないか?

 この点が一番心配な点ですが、この「テロ等準備罪」の構成要件は次のように大変厳しいものとなっております。

 1)犯罪主体・・・組織的犯罪集団(共同の目的が一定の犯罪を実行することにある団体)であること

 2)対象犯罪・・・長期4年以上の懲役・禁固にあたる罪のうち、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものに限定

 3)計画・・・犯罪を行うことの具体的計画

 4)準備行為・・・上記計画に基づき資金又は物品手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為

 

5.おわりに

 このように、テロ等準備罪は、国際的に合意された最低限のテロを含む国際的な組織犯罪対策を実施しようというものであります。この条約の締結が遅れ、結果として、オリンピック・パラリンピックで多くの外国の方々を迎えその安全を確保する義務があるわが国が、テロ対策が十分でない国だと思われるのは避けねばなりません。批判は歓迎です。ですが、批判のための批判はよくない。批判される方は、この国際条約を締結する必要はないということなのか、あるいは必要があるけどどこどこがよくないということなのか、そのどちらなのか意見をはっきり述べるべきではないでしょうか。意見を言わず、治安維持法の再来だとか一億総監視社会だなどといたずらに不安をあおる批判だけするのは、責任ある態度ではないと、さいとう健は強く思っています。


2017.04.12|考え方

メインメニュー

PRコンテンツ

各種情報