saitou_ken_monogatari
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歴史のうねりというものにまでおよぶこととなった。斎藤は、この本で奉天会戦からノモンハン事件までの34年間に日本を襲った構造的な変化として、指導者層の変質、つまり、明治の元勲たちから軍人エリートたちへの世代交代によってジェネラリストの指導者を喪失したのではないか。日露戦争は、ジェネラリストのリーダーがトップに立った。彼らは、武士の末裔の人たちで、教育もジェネラルであった。武士というのは、軍人とちがって、財政から科学技術まですべての分野について学んでいた。いっぽう、軍人は、軍事だけのスペシャリストにすぎない。武士と軍人は、まったくちがう。スペシャリストの軍人が日本の全局面をリードするようになり、日本全体が軍事に引っ張られることになった。いまひとつは、組織が変質したことであった。陸軍も、海軍も、自己改革が完璧にはできなかった。斎藤は、この2点を指摘した。斎藤は、あれだけ優秀な人がいたはずの旧帝国陸海軍が、なぜあれだけ大きな失敗をしてしまったのか、その原因は、はたして現在克服されたのか、という問題意識からこの本を執筆したのであ19さいとう健けん物語作家・塩野七生さんにお酌

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