saitou_ken_monogatari
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で、ビジネスで成功した人間が福祉活動に巨額の寄付をしたりするケースが多いのは、背景にこういう考えがあるからであろう。米国流が一番いいなどと言うつもりは毛頭ないが、現在の格差議論の際に、結果の平等か機会の平等かの視点だけでなく、こういう視点も必要ではないかと考える。最後に、国民の信頼だ。クリーンで透明な政治は、国民の信頼を得、政治が機能するための最低限の前提だと思う。斎藤は、そういう熱い思いを抱きながら論文を書き、申請書、履歴書とともに公募選考委員会に提出した。3月3日、自民党は、候補者公募の受け付けを締め切った。終盤に応募が殺到し、自民党の衆参単独補選の公募では過去最高となる221人が応募した。斎藤の好きな言葉は、高杉晋作の辞世、「おもしろきこともなき世をおもしろく すみなすものはこころなりけり」である。高杉が上の句を言ったところで、臨終に立ち会った野村望東尼が下の句を付け加えたとのことだ。斎藤は、この下の句はおかしいのではないかと思っている。高杉のような生き方をした人間が、こんな説教くさいことを辞世で述べるはずがない。では一体、高杉は下の句をどう読もうとしていたのか。いまの斎藤にはわからないという。が、彼のように人生を完全燃焼することによって、高杉が真に言わんとしていた下の句を確信をもって発見したい、これが斎藤の望みである。斎藤は、自分のこれからの人生は、この14字を発見するためにあると思っている……。13・「高杉晋作のように人生を完全燃焼」26

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